ネットショッピングをしていた時に、質問したいことがあったので店舗に問い合わせをしたことはありますか?
営業時間内であれば対応してもらえますが、これが夜中や店舗休業日だったりすると、連絡がくるまでに時間がかかりますよね。買う気があるのに時間があいてしまって、結局購入をやめてしまった、そんな経験はないでしょうか。
しかし、24時間365日対応可能、いつでも接客をしてくれる店舗がこれから増加するかもしれません。
それは「AI店長」の存在です。
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「Rakuten AI Optimism」で楽天市場の各店舗に「AI店長」を導入する構想を発表しました。
この発表後には「AI店長って便利そうだけど、どういうことをしてくれるの?」「楽天で買い物しやすくなる?」といった反応がみられました。
AI店長の登場はどのような変化をもたらしてくれるでしょうか?
今回はAI店長のメリット、デメリットの面から考察してお伝えします。

楽天が発表したAI店長とは?
今回発表された構想によると、楽天市場の各店舗の専門知識や店長のプロフィール、接客スタイルを学習した「AI店長(アバター)」が、24時間365日体制で接客してくれます。
また顧客の質問応答から商品提案、購入完了までをサポートします。
例えば、夜中のネットショッピング中に質問があっても、今までは店舗の営業時間内で返信がくるのを待たなくてはいけませんでした。
しかし、AI店長がいれば、夜中であってもいつでも本物の店長とやりとりをするように質問ができ、購入まで進むことができるというわけです。
AI店長のメリット
AI店長導入にあたり、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
店舗側と顧客側の視点から、考えられるメリットを5点ずつまとめてみました。
店舗側のメリット
- 人手不足の解消と業務効率化: 24時間対応が可能になり、夜間や休日も接客対応ができる。
- 販売機会損失の防止: 対応の遅れによる購入キャンセル防ぎ、注文手続きまで自動化することで購買率を高められる。
- 自社の強みの最大化: 「自社商品のこだわりや解説(うんちく)」を学習させることで、他社との差別化を図れる。
- 接客品質が安定:担当者による接客のばらつきが少ない。
- 外国語対応:海外のお客様への販売も強化できる可能性がある。
24時間対応が可能になることは店側、顧客側どちらにとっても大きなメリットですよね。
これまで対応に時間がかかってしまったために、顧客が購入をやめてしまうという、店からするとなんとももったいない損失を、AI店長がいることで防ぐことができるというわけです。
そして、これまで顧客対応に割いていた時間や人員を他の業務にまわすことができます。そのため業務の効率化がはかれます。

顧客側のメリット
- 24時間対応可能:時間帯を気にせずいつでも対応、疑問解消してもらえるので購入しやすくなる。
- ニーズに合わせて提案 :「40代女性向け」」など曖昧な相談にも対応。自分の好みやニーズから提案をしてくれ、商品選びがスムーズに行える。
- 専門的なアドバイス : 店舗独自のノウハウやこだわりを学習しているため、専門的な接客提案を受けられる。
- パーソナライズ提案 : 楽天トラベルでの旅行予約など、他の楽天サービスの利用状況と連動し、生活シーンにぴったりな提案が受けられる。
- AIだから気軽:人とのやり取りでは気兼ねしてしまうようなことも、AIなので気軽に相談がしやすい。
AI店長の強みとなるのは、その店舗で扱う商品の情報を学習していることです。データが豊富であれば、こちらのニーズにあった商品をすぐに提案してくれますし、専門的なアドバイスももらえます。
商品を購入するとき、他の商品と比較してどちらにしよう?と迷うことってありますよね。
そんなときも、AI店長に相談すれば比較商品のメリットデメリットを提示してくれ、顧客の購入目的から、どちらがふさわしいかまで提案してくれます。
また相手が人だと気を遣いがちな問い合わせや連絡のやり取りも、AI店長であれば気軽にやりやすいと感じる人は多いかもしれません。
AI店長のデメリット
これまでAI店長のメリットを店舗側、顧客側の視点でまとめてきました。
次に考えられるデメリットです。こちらも店舗側、顧客側の視点から5点ずつまとめました。
店舗側のデメリット
- データの登録、メンテナンス負担の増加 : AIに正しく接客を行わせるためには、店舗のデータを高精度で登録、更新し続ける必要があり、事前準備の負担がある。
- AI運用のスキルギャップ : 店舗スタッフによってAIの操作性や活用スキルに差があり、ITリテラシーが低い中小店舗では使いこなせずに恩恵を受けづらい可能性がある。
- ハルシネーション(誤情報)によるトラブルリスク:AIが間違った情報を案内して、顧客とのトラブルを引き起こす。
- 他店との差別化:AI生成の定型文や標準化された対応に頼りすぎ、店舗独自の個性や接客スタイルが失われ、他店と同質化してしまう。
- イレギュラー対応の難しさ: AIの対応で不満を持った顧客が感情的になり、人間への引き継ぎ段階でクレームが深刻化するなど、特殊な要望やトラブルへの柔軟な初期対応が難しくなる。
顧客側のデメリット
- 回答の具体性不足 : 「自分の体型や好みに本当に合うか」といった個人的な相談に対して、一般的で無難な回答しか得られず満足度が下がる。
- 誤回答による買い間違いや不利益 : AIの誤った回答を信じて商品を購入してしまって、希望と違う商品だったり実害を被るリスク。
- 人間的な「温かみ」の交流の減退 : 人間ならではの行き届いた気配りを重視する顧客にとっては、AI中心の機械的な接客は味気なく感じられてしまう。
- 意図しない購買誘導(パーソナライズの裏返し) : 購買履歴に基づいたAIのおすすめ機能により、不必要な購入を促されたり、特定の商品ばかり提示されるフィルタリングが起きる懸念。
- プライバシーやパーソナルデータ利用への不安 : 購買履歴といった多様な個人データが分析、活用されることに対し、セキュリティ上の懸念や心理的抵抗感がでる。
AI店長の懸念点
AI店長導入の考えられるデメリットをまとめてきました。デメリットからAI店長についての懸念点がわかります。
AI店長に意図通りの接客を行わせるには、商品知識や店舗独自の「うんちく」データを精度高く学習させる必要があります。この設定に人と時間を費やせる大規模店舗ならいいですが、そうではない小規模店舗では負担が大きくなるかもしれません。
そして何より、AIは完璧なようで完璧ではありません。
間違った回答をする可能性があります。※ハルシネーション(AIが事実とは違う誤った情報や、存在しない架空の内容を、あたかも正しいことのように作り出して答えてしまう現象)は、今でも起きている現象ですよね。
AI店長が間違った説明(アレルギー対応、サイズ感、互換性など)をして、顧客がそれを信じて購入した後、もしトラブルになったらその責任の所在はどこにあるのか?こちらも懸念される点です。
ハルシネーションによるトラブル、クレームの増加は店舗への信頼の問題となってしまいます。
また、店長のアバターと言いつつ、結局はどこも同じようなAIの定型対応になり、楽天市場本来の「人による接客の強み」が薄れてしまうのではないか、という点は大きな懸念です。

AI店長今後の展望とまとめ
今回は楽天AI店長導入による考えられるメリット、デメリットを懸念点も踏まえつつお伝えしました。
今回の発表で、三木谷社長は「AIの普及が急速に進む中、今後は『人』がより大切になる」ことを強調しています。そして、楽天市場の「人による接客」の強みをAIで拡張するという考えを語りました。
まだ構想が発表されて年内に試作版開始という段階ですが、楽天市場にAI店長が登場するということは、とても注目されています。
しかしAI店長が登場することで、「全てが簡単で便利になるぞ!」と手放しで受け入れられていないことが、今回の記事を書くにあたって、調べてわかったことです。
なぜなら、AIは確かに便利でわたし達の生活を助けてくれるものとなっていますが、完璧ではないことを知っているからですよね。
先述したハルシネーションもそうですし、人の感情的なトラブルやクレームにも、定型の対応しかできないのではと思われているからです。
それでも楽天で買い物をすることがある人にとって、24時間365日対応可能になるのは大きなメリットです。運営する店舗も、顧客対応に割いていた時間を他の業務にまわすことができれば、サービスや質の向上となりえます。
AI店長について、メリットとデメリットが交差している今、「人による接客」と「AI店長の接客」がどのように作用しあって展開されていくのか、今後の動向に注目です。

